2015年02月22日

今森光彦×中村征夫写真展『森と海−すぐそこの小宇宙』

フジフイルムスクエアでは、写真家
今森光彦さんと中村征夫さんによる写真展
『森と海−すぐそこの小宇宙』を開催中です。

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自然写真家のなかではビッグネームのおふたり、
昔から仲が良かったそうですが、はじめての二人展です。
今森さんは里山をテーマに琵琶湖水系を中心に撮影され、
人と自然の狭間の空間を写し取っています。

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中村さんは東京湾をメインテーマとし、全国の海に潜って
その姿を記録しています。

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陸上と海、大きくテーマは離れていそうに見えながら、
実はつながっている。そこには動植物が、さまざまな環境が、
そして人間がお互いに関係し合って存在している。
そうした大きく広がる人もふくめた自然の営みが
写真を通して伝わってきます。
お二人ともとっておきの写真、そして新作も多数提供され、
その対象に向ける情熱には心が動かされます。

お近くにお寄りの際はぜひ。

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この企画展、私も立ち上げに深くかかわり
ただいま絶賛参加中の
自然と写真の新雑誌『ライフスケープ』の
刊行記念企画でもあります。

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21日、22日今森光彦氏と中村征夫氏によるギャラリートークも開催。
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フジフイルムフォトサロン
東京都港区赤坂9-7-3 東京ミッドタウン・ウエスト
http://fujifilmsquare.jp/detail/1502200123.html
2015年2月20日(金)から3月11日(水)まで

ミッドタウンのスズメは、なんかクレクレ光線が
強力です。

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2015年01月24日

細密なる記憶--『バンクス花譜集』展

オーストラリアを代表する植物にバンクシアと
よばれる植物があります。
このバンクシア、別名を山火事植物とも呼ばれ、
その果実は堅く、山火事にあってはじめて爆ぜ、
種子が出てくるというおもしろい植物です。
オーストラリアの乾燥した気候で、
多発する山火事でも種子が残るように
進化したのでしょう。

渋谷はBunkamuraザ・ミュージアムで開催中の
キャプテン・クック探検航海と『バンクス花譜集』展
を見てきました。
バンクスは、オーストラリアの東岸に
西洋人としてはじめて到達したことで著名な
キャプテン・ジェームズ・クックの航海に同行した植物学者で
オーストラリアや太平洋の島々で、多数の植物や
民俗学的資料を収集しました。

実は先述のバンクシア、以前からそのおもしろい特徴は
知っていて、なんとなく「バンク」のあたりが爆ぜるっぽいな…
と名前の由来も適当な印象にとどまって
「さもあらん」などとひとりごちていたのですが、
なんとこのバンクスの名前をとって命名されたとのこと。
思い込みは良くないな。と学んだ次第です。

バンクスは、この大変貴重な資料を出版して、
ヨーロッパの人々に紹介しようとしたのですが、
資金の不足から銅版の製作までしかできず、
200年たってようやくカラーで印刷するプロジェクトが
開始されたという、おそろしく気の長い話なのです。

バンクスの指示の元、画家シドニー・パーキンソンが
描いた植物は、緻密で特徴をよく捉え、
線がきざみ出した植物の葉や花、毛の質感、密度は、
感嘆の声が漏れるほどで、また植物という自然の理が
作りだしたバランスがフレームの中に美しく収まります。
彩色も美しく博物学的資料という本来の
学術的な使命は十分に果たしつつ、
絵画芸術としても価値あるものでした。

さらに面白いのは、航海のエピソードや、
太平洋の島々の人々の文化に関する
品々も展示され、その部分の好奇心も
満たしてくれました。

キャプションが直訳的で、
植物の知識が乏しいように感じられたこと。
それに、分類群の科名くらいは書いてくれると、
さまざまな植物との対比ができてより楽しめたのに
といった点は残念でした。
さらに、図録は装丁は雰囲気良く作られているものの
肝心な植物標本画の多くがサムネイル程度に小さくしか
掲載されていない。これは残念でしかたがありません。

しかし、その細密と技術、
そして博物学が華やかに花開いた時代の息吹、
収集と出版に積み重ねられた人々の手。
それらを美しい銅版画で感じることができる。
価値ある展示だと思います。

2015年3月1日まで。

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2014年12月03日

動物の絵を見に行きました-増田寿志展

東京は紅葉が盛りです。
さて、そんななか
毎年阿佐ヶ谷で開かれている、
北海道在住のワイルドライフ・アーティスト
増田寿志さんの個展が開かれているので行ってきました。

静かな絵なのですが、動物たちの
ぎゅぎゅっとつまった生命や、呼吸、躍動、愛らしさ、たくましさなどが
つまっていて、動物好きのツボをぴしぴしとついてくるのです。
おすすめです。

Art Gallery OPPO
東京都杉並区阿佐谷北2-15-6
TEL 03-3223-2080 ■JR阿佐ヶ谷駅北口より徒歩2分
http://homepage3.nifty.com/oppo/
12/9日曜日まで。

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2014年11月25日

横浜でヤンソン展

横浜そごうのそごう美術館で開催中のトーベ・ヤンソン展に
行ってきました。

ムーミンシリーズの作者として有名すぎるくらいに有名な
作家ですが、画家としても数々の作品を残しています。

ヤンソンのくらしたフィンランドは
ロシアやドイツといった大国に圧迫されてきた歴史を持ちます。
戦争に反対していた彼女は第二次大戦中、戦争という現実を身近に感じながら
さまざまな風刺イラストや絵画を残しています。
ムーミンが初登場した雑誌ガルムの表紙や挿絵が有名ですが、
その他にも数々展示されており、この物騒な時代に
どう生きるべきかといった命題を投げかけられた気持ちになります。

もちろん、ムーミンや彼女が提供した童話の挿絵も展示されています。
今映画化しているトールキンのホビットの挿絵も描いていて、
不思議な国のアリスもそうですが、ヤンソンの挿絵になると
世界観ががらっと変わるのがおもしろいです。
ヤンソンのさまざまな側面を見られてファンとしてはうれしいかぎりです。

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再現された無人島の小屋の部屋
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2014年11月07日

「空を見る」展

茅場町の古書店、森岡書店にて
石橋照美さんの陶と高橋和枝さんの絵による2人展
「空を見る」展が開催中です。

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この古書店、茅場町の古いビルにあり、
ドアをあけると不思議な空気を感じる
とても居心地の良い場所です。

石神さんのかわいらしい建物の陶から高橋さんが絵を
高橋さんの絵から石神さんの陶を。
おたがいにイメージを持ち寄ったという、美しい展示となっています。
森岡書店さんの空間で陶は空を見上げる大地のよう。
絵はその世界で見られるくらしや息吹、静かな時間のシーンを
映し出しながら浮かぶ窓のよう。
そんな印象を受けました。

8日の土曜日まで。
13時から20時まで/最終日18時半まで

森岡書店
〒103-0025
東京都中央区日本橋茅場町2-17-13
第2井上ビル305号 森岡書店
http://moriokashoten.com/

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このおふたりによる2人展は2012年の1月にもおこなわれていて
このブログでも紹介しています。
http://porcupine.sblo.jp/article/53037819.html

ほぼ3年ぶりに訪れたのですが、あいかわらず
ステキなたたずまいです。
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2012年12月01日

WILDLIFE ART!

今週はワイルドライフアートの作家さん2人の個展に。
もっと速く紹介できれば良かったのですが、気づくと会期も終わり近し……

お二方の描く動物たちは、とても自然な雰囲気です。
フィールドに出ている人間だからこそ描くことができるのでしょう。

行っていただける方はぜひ!

●増田寿志さん作品展

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なんと明日日曜日 16:00まで…です。。

場所:art gallery OPPO
JR阿佐ヶ谷駅・北口より徒歩2分

東京都杉並区阿佐谷北2-15-6
電話 03-3223-2080
http://homepage3.nifty.com/oppo/



●野鳥画家、箕輪義隆さんの猛禽類をテーマにした作品展
「猛禽」が開催中 原宿です。

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原宿 積雲画廊にて
JR山手線「原宿駅」竹下口より徒歩2分
12月3日(月) 11時〜19時(最終日は17時まで)
渋谷区神宮前1−19−14

http://www.sekiungarou.com/
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2012年10月22日

大江戸絵なぞなぞ

浮世絵をはじめとする江戸時代の文化に
惹かれるものがあるワタクシなのですが、
その理由のひとつに洒落っ気というものがあるように思います。

判じ絵というものがあります。
判じる=推理する 絵。
つまり頭を使って読み解く遊びです。
絵なぞなぞのようなものでしょうか。

代表的なものに「へのぬ」と読める手ぬぐい
を見たことはありませんか?

これは「へ」ではなく鎌の絵。
そして「の」は円=輪
それから「ぬ」で、「鎌輪ぬ=かまわぬ」
と読むのです。

ここまでやるのなら、「ぬ」も何かしら仕掛ければいいのに!
とも思いますが、それもまたご愛嬌。
細かいことは言いっこなしです。

じゃあ、これは?

サルの絵に濁点がついています。

……


そう!「ざる」ですね。



次は地名です。
ひらがなで「すぎ」とあります。
わかりますか?

「かなすぎ=金杉」です。


江戸時代にはこうした判じ絵がおおはやり。
洒落っ気の体現の一つです。

日常にこうした洒落っ気をちりばめることで、
物事を楽しんだり、きびしい局面を笑って受け流してみたり
なんとなーく、人生を泳ぎやすくなりそうな気がします。


さて、東京渋谷は「たばこと塩の博物館」では、
そんな判じ絵を集めた「江戸の判じ絵」を開催中です。

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展示室には判じ絵が目白押し。
なぞなぞに次ぐなぞなぞ。
駄洒落そして駄洒落。

けっこう、むずかしいものもあります。
何より想像力と思考の飛躍が必要。
脳の使ってないところが動き出す。
そんな感覚がありました。

江戸時代の役者の名や、現代とはちがうものの名称などを
知らないとわからない物も数多くありましたが、
それはまあ、置いておいて、
地名や日用品などはわかりやすく、
何より絵を眺めているだけで楽しめました。


渋谷の町中ですし、お近くを通られたら
ぷらっと寄ってみてはいかがでしょう。


注意事項が一つ。
小難しく考えなければ行けない事項を抱えながら、
この展示を見ると考えすぎて頭が痛くなる危険性大です。
心安らかに訪れるべし。


『江戸の判じ絵 〜再び これを判じてごろうじろ〜』
たばこと塩の博物館にて
〒150-0041 東京都渋谷区神南1-16-8
http://www.jti.co.jp/Culture/museum/index.html
11月4日まで。




ちなみに、
「たばこと塩の博物館」入館料100円です。
さすが…専売公社……
この一等地にして、太っ腹というか何というか……
世の中の仕組みについてちょいちょい、突っついてみたくなりますが、
まあ、いろいろありますな。



図録もステキ

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2012年10月16日

化石水族館


生物が誕生してから長い長い時間をかけて、脊椎によって体を支え、骨格についた筋肉で自由に泳ぎ、水中を席巻する生物群が誕生しました。それが魚類です。魚類は最初の脊椎をもつ生き物であり、のちのち、その一派がこれまた長い長い時間をかけてわたしたち人間へと進化したのです。

さて、気の遠くなるほど長い長い魚の歴史の中で、産まれては消えていった種類もたくさんいます。大きな分類群ごと絶滅してしまった初期のグループの魚類。そして、その後の進化の中で、当時の地球環境や食物環境などによって、現在の魚には見られない特徴をもった奇妙な絶滅魚類がいるのですが、そんな魚たちは化石になって見つかり、私たちはそのいにしえのすがたを知ることができます。

さて、
阿佐ヶ谷のギャラリーOPPOにて、魚&水生生物イラストレーターの友永たろさんによる、化石魚類たちをテーマとした個展「化石水族館」が開催中です。


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友永さんのかわいらしい画風と絶滅した魚類のおかしなすがたが絶妙に合い、描き上げた化石魚類たちは、ユーモラスで楽しげにフレームの中を泳いでいました。
これは、何のためについているんだ???と思わせる、へんなパーツをつけた魚の絵から往事の海の中や、彼らがどのようなくらしをしていたかを想像するのがとても楽しい作業です。
さらには、その魚のことや時代背景、研究の実際、友永さんなりの解釈、描かれるまでの制作秘話などが書かれているキャプションがまたおもしろい。


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おかしな形の古代魚にはぼくも漠然と興味があり、漠然と好きなタイプ……なんてのも、いたのですが、エピソードを読むとちょっと好みが変わってきたりします。
やはり、見た目より中身が大事なんですね。。。ヒトも魚も。。。


へんな魚に興味がある方は、お出かけいただくと良いと思います。

ぜひ。

10月21日までです。


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アートギャラリーOPPO
〒166-0001 東京都杉並区阿佐谷北2-15-6 
tel.03-3223-2080 fax.03-3223-2081
通常はopen=11:00〜18:00、休廊日は月曜日と常設展示中の祝日。
但し、個展等の場合はopen=11:00〜19:00 最終日は17時まで。(会期中無休・鑑賞無料)

http://homepage3.nifty.com/oppo/


友永たろさんHP
http://boku-sui.net/


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2012年07月11日

君にも見えるウルトラのアート「ウルトラマン・アート!」展

埼玉県立近代美術館では、ウルトラマンの秘密をアートの視点から探る!
『ウルトラマン・アート!時代と創造』を開催中です。
この展示、ウルトラマン45周年の一環として開催され、2010年の北海道旭川美術館で開催され、大人気を博し各地をサーキット。
今、埼玉に来ています。

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実は関東では、茨城県近代美術館でも昨年開催されており、そこにも見に行ったのですが、近くにやってきたことだし、もう一度でかけて参りました。
この展示の中心となっているウルトラマンやウルトラセブンからは、世代的にちょっと遅れて生まれてきたのですが、昔は何度も何度も再放送されていて、やはり懐かしさとともに、子どもの頃のわくわく感が何度も足を運ばせるのかもしれません。

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怪獣やメカの造形、デッサン、台本や制作の裏側などが多数展示され、興味深く見てきました。

この展示、アートのくくりは伊達ではありません。
ウルトラマンから45年後の現在、CGが全盛となり、なんでも仮想の世界で作ることができ、画像、映像としては提供されてはいるのですが、限定要因の多い中で、プロフェッショナルたちが手と知恵で産み出した、特撮技術のアイデア、造形はリアリティがあり、見るものを惹きつけるものがあります。
設定やストーリー、メッセージなどもふくめ、当時、番組は優れたデザインのもと視聴者に提供されていたことがわかります。

多少残念だったのは、茨城の方が上手に展示物がカテゴライズされ、その意味合いがわかりやすかったということでした。また、茨城では台本の表紙のデザインにもっとも惹かれたのですが、埼玉の展示では変更になってしまっていました。

とはいえ、大人も子どもも楽しめる展示で見応えがあります。
プロが真剣に作り上げた作品は「子供だましではない」これにつきると思います。


埼玉県立近代美術館
会 期 2012年7月7日(土)〜2012年9月2日(日) まで


永遠のあこがれホーク1号。
合体って無条件でかっこいい。

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滝の中からの発進は男の夢。
ホーク3号。

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ビラ星人

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地球人同士を争わせて弱体化させ、
地球を侵略しようという頭脳派宇宙人との談判してきました。

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それでは、また。


じゅわっ!

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2012年07月06日

メルヘン、メルヘン!「クライドルフの世界」渋谷Bunkamura ザ・ミュージアム

エルンスト・クライドルフは、スイス、ベルンにうまれた画家です。
1956年に亡くなっていますが、自然の中の草花や昆虫を主人公にした絵本で、
いまだにスイスで愛されています。

花も小さな生き物も好きなので、その世界に触れようと、
渋谷Bunkamura ミュージアムでただいま開催中の『クライドルフの世界』展に出かけてきました。

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美術館のなかでは、クライドルフによって擬人化され描がかれた、花や昆虫たちの絵を多数見ることができ、なるほどメルヘンの世界が広がっていました。

ところで、メルヘンって普通に使っているのですが、具体的に何?と聞かれると。
「ほら、あの洋風のおとぎ話的な?ひらひらした服をきている娘さんとか?とんがり帽子とか?妖精とか?みたいな?」と、まことにふわっとした答えしか出せません。
おそらくこれは「メルヘン」ではなく「メルヘンチック」でしょうね。

なので調べてみました。日本の辞典界の権威と言うべき岩波書店の広辞苑で。
かの大辞典によると…

「メルヘン[Marchenドイツ]説話文学の一形態。伝承による神話・伝説に対して、まったくの空想によって作った物語。童話・おとぎ話など。」

と、あります。

なんということでしょう!
このお役所的解答!
およそ我々が想像しうるメルヘンの世界とはかけ離れた、硬い文章内容です。
はっきり言って、創業元禄高知土佐藩御用達菓子舗、西川屋のケンピよりも硬い。
これでは夢も童心もあったものではありません。
天下の広辞苑といえども「メルヘンの記述」は世界観を壊さないものであって欲しいものでございます。とくに「まったくの」はいりません。興ざめしてしまいます。

閑話休題。

クライドルフの描く世界は、まさにメルヘンそのもの。
クライドルフが愛したスイスアルプス花や昆虫が、ときに人のすがたとなり、ときに妖精やこびとたちと一緒に楽しげに描かれています。

ぼくなども、野山で虫や花のすがた形、そのくらしのおもしろさに触れるにつけ、同じようなフィルターをかけているように思います。
ぼくは写真を撮るので、ファインダーという枠の中に入った自然物たちは、映画的であり、絵画的であり、劇場的であるように思うのです。ファインダの中で見ている世界を、役者さんに割り当て演じてもらったら、まさにこのようなメルヘン世界に近くなるのかもしれません。

などと、空想および妄想を脳内にわきおこしたりするのですが、
クライドルフの描くメルヘン世界は、しっかりとした観察の上に成り立ってることがよくわかります。
クライドルフが見たアルプスの花を知らなくても、ああ、あの花のなかまだねと、すぐにわかります。花や葉の、植物の分類群の特徴、方程式を正確に描かれているのです。
これは昆虫にしても同じ。
ガやその幼虫たちが集まっている絵などは、知っている昆虫にほくそえんでしまいます。

こうした空想の世界は、荒唐無稽な物語と思われがちですが、観察眼の上に成り立っているからこそ、絵や物語が深くなっているのだと感じました。
子どもたちが描く絵、決して上手とはいえない絵の中に、おどろくべき観察の視点が描かれていることがよくあります。
コナン・ドイルも巻きこんで話題となった「妖精写真」事件。
虚実だけが話題になりますが、おそらくそんなことは些末なことで、
子どもたちにはきっと心の中で見えていたんじゃないでしょうか。

観察眼、いくつになっても失いたくないものです。
だって、同じ景色を見ても、より多くのものを見、感じることができるのですから。

よい観察をもって見る自然の中で紡がれている物語は、神話的であり、伝説である。
メルヘンの世界の中には、決して「まったくの空想」の産物などではないものがあるのだ。
恐れ多くも天下の広辞苑さまに対して、そんなことを思ってしまうわけです。

開催期間
2012/6/19(火)−7/29(日)

開館時間
10:00−19:00(入館は18:30まで)会期中無休
毎週金・土曜日は21:00まで(入館は20:30まで)

会場 Bunkamuraザ・ミュージアム


あ、図録は買った方がよいですよ。
お勧めです!(サプライズ有り)

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巡回予定
郡山市立美術館(福島) 2012/8/4(土)−9/17(月・休)
富山県立近代美術館(富山) 2012/11/10(土)−12/27(木)
そごう美術館(横浜) 2013/1/30(水)−2/24(日)
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2012年01月15日

歌川国芳展

浮世絵が好きです。
どこか惹きつけられる、見ていてものすごくおもしろい。
その芸術性が…とか、ジャポニズム云々とかではなく、単純にグッとくるものがあるのです。
見ているときのウキウキ感はおもちゃ箱とか、誰かの家の本がたくさんある本棚をながめるとか、知らない町で興味深いところを探しながら歩くとか、そんなときの感覚に近いものがあります。

一枚の浮世絵から物語、文化、表現、刷版、刷りの技術、いろいろなものが詰め込まれているからかもしれません。
絵師が目立たぬように忍び込ませたユーモアや、メッセージ、見れば見るほどほじくり出せる楽しさがあります。
それでいて、絶妙な構成、デザイン、バランス。
「妙」がたくさん詰まっていると思うのです。

上手な浮世絵の構成を見ていると自然の中にいて何か対象を見ているとき、全てがバランスよく落ち着いていて見え、感じととき、そのバランスの絶妙が「腑に落ちる」ことがあります。
その感覚にも近いとも思っています。
とはいえ、ほかのジャンルの絵にだって、そうした要素はあるので、やはり「合う」のでしょう。

そんなこんなで、浮世絵、よく見に行きます。
昨年は大きな所では上野で「写楽展」山種で「ボストン美術館 浮世絵名品展」などがありました。
写楽展は知られている作品自体が少なく、作品の状態も良くないこともあり、展覧会の構成上難しかったとは思うのですが、個人的には大満足とはいきませんでした。

そんなこんなで年もあらたまった2012年。初浮世絵は森アーツセンターギャラリーで開催中の「歌川国芳展」。
没後150年記念だそうでございます。


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国芳といえば江戸時代末期の絵師。その絵から独特な発想、西洋画からも技術を取り込む斬新さ、観察力、緻密な表現などで、浮世絵文化の成熟、集大成を体現しているといっても過言ではないでしょう。

さて、展示。
江戸末期ということもあって作品の質も保存性が高く、状態が非常によいのがなによりうれしいところです。
展示構成はシンプルでわかりやすく、風俗画、役者絵、美人画、戯画などジャンル別に展示しています。そこここに遊び心も感じられ、楽しく見ることができました。

国芳のイマジネーションは、多岐にわたるジャンルに渡って、自由に跳び、走り、実験的で挑戦的、そしていたずらっぽく表現されています。
見る側の心をふわっと軽く浮かび上がらせ、うならせます。
江戸の風俗や娯楽、人々の生活に想いを馳せることが存分にできました。


見たことがあるであろう有名な絵も多数展示していますし、あまり見たことはないけども……という方にもお勧めできます。
日本の大衆文化ここにあり。


『歌川国芳展』
http://kuniyoshi.exhn.jp/

2月12日まで
17日に前期が終了。作品の一部が入れ替わります。
前後期、両方見に行きたい方はすぐさま六本木へGO!
後期も行きたいものです。


森アーツセンターギャラリー
〒106-6150
東京都港区六本木6丁目10−1六本木ヒルズ森タワー52F


図録もしっかりです。

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2012年01月10日

茅場町の異空間 森岡書店

もう10年以上前のことですが、PCやOA機器の営業を生業としていたとき、八丁堀あたりを担当したことがありました。
このあたり、京橋や八重洲あたりにくらべると、まだまだ開発の波が押し寄せてはおらず、新しく建ったビルの間にとても古いビルがあったり、「○○商店」といったような社名の、大分古くから営業されているような会社などがあったりと、「時代の波打ち際」のようだな、などと思って歩いたものでした。

さて昨日、ご案内をいただいていた造形作家石神照美さんと絵本作家高橋和枝さんの二人展「そら展」を見に、そんな八丁堀からもほど近い茅場町に出かけました。この界隈はオフィス街で、作家の方が茅場町で個展などを開く、というのは僕の周囲では比較的珍しく、少しの違和感がありました。

駅についたのは日が暮れた後。地下鉄茅場町の駅を地上に出ると、祝日のオフィス街の夜は暗く、人通りもほとんどありませんでした。まるでSFの「人々が忽然と消えた町」のように。
ギャラリーは森岡書店という古書店に併設されているらしく、ビルの3階ということでした。
しばらく歩き、通り過ぎたことに気づいて少し戻り、ここかと見上げたのは霊岸橋ほど近く、川沿いに佇む戦前につくられたであろう4階建ての古いビル。このようなところに古書店が…再び違和感を感じたものです。


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建物のあちこちに垣間見られるのはモダンな装飾、石造りの階段を数段上り、大きなガラス戸から中に入るとあらゆるところがしっかりとした造りで、「怪人20面相」が活躍した時代と世界を彷彿とさせます。
長い年月を過ごしてきた建物のある種の迫力を感じ、まるで建物自体が息をしているように思えました。


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階段をのぼり、その一室。
がらんと広く白い室内は、歴史を感じる調度に飾られ、古書店とギャラリーに境はありません。
いわゆる古書店のように本が山積みということはなく、厳選された本が室内に配されています。
昔の調度に独特の機能と装飾が融合した形態、古いビルの醸し出す空気、室内の配置さまざまなものがデザインを織りなしていました。
「色、形、量において余計なものは一切なく、それでいて少し足りないところと、少し余っているところがある空間」そのような印象です。


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石神さんのモノトーンの小さな家々の造形、高橋さんの落ち着いたきれいな色使いの絵が、ギャラリーにはとてもよく合っていて、ギャラリーの表情に別の1面を加えていました。

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帰って調べると、このビル「第2井上ビル」は昭和2年(1927年)、関東大震災のあとに建てられたとのこと。
昭和20〜40年代はセーラー万年筆の本社とであったこともあるとか。
こういった古い建物に興味がある方も出かけてみてはいかがでしょう。


森岡書店
〒103-0025
東京都中央区日本橋茅場町2-17-13
第2井上ビル305号 森岡書店
http://moriokashoten.com/


そら展は
1/11まで。
http://kumanekonikki.jugem.jp/?eid=139


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2011年11月04日

ヒビノイロカレンダー2012展

ご縁があって、ちょこちょこ出かけている阿佐ヶ谷のギャラリーcontext-sにて、毎年恒例の「ヒビノイロカレンダー」展が行われています。
絵本作家、高橋和枝さんとギャラリー主の石神照美さんらのユニットによるカレンダーで毎年楽しみにしています。

なんというかほのぼの、なんというかゆったり、見るものの脳を柔らかくしてやまない高橋さんの描くクマが、石神さんの立体造形の中に入りこみ、まるで小さな小さな人形劇を見ているようです。

さらに今年は高橋さんが何に目覚めたのか「ダジャレ」をテーマにされているようで、なんというかおとぼけ、なんというかのゆるさで、見るものの口元をにやにやと緩めてやまないものとなっています。

カレンダーはもちろん、とてもとても味のあるものなのですが、やはり立体原画で見ると楽しさ5倍増しで、その世界の中に入って行きたくなってしまいます。
クマたちのおとぼけの日常を、道ばたで眺めている気分とでもいいましょうか。

お時間のある方も、そうでないかたも是非出かけてみてください。
今回の展示にあわせて、北海道のジャムやさんがカレンダーのイメージで製作されたオリジナルのジンジャーシロップも販売しています。

絶品です。

11月6日の日曜日までです。
日曜日は高橋さんも在廊されるそうです。 

詳しくは高橋さんのブログにて。

http://kumanekonikki.jugem.jp/

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かわいすぎる戦利品

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2011年08月27日

路地裏のギャラリー「ものがたりの粒子」

昨日の話。
半蔵門線の改札を抜け、神保町A5出口に向かう怪談には、人々が雨宿りをしていました。
外は驚くほどの大雨。

目的のギャラリー「路地と人」は案内状によると歩いてすぐ2~3分のはず。
道は靴が半分ほどまでつかる深さに雨水が川となり、雨脚は景色が白くかすむほどだったのですが、まあ大丈夫だろうと傘をさしました。
しかし、傘は下半身に対してまったく意味をなさない状態で、はいていた靴の防水機能は水量の多さにキャパシティを超え、足を濡らしました。

そんな、感じでたどりついたギャラリーは、路地を入ったところの古いビルの2階にあります。
神保町界隈にはよくある古ビルではあるのですが、なかなか入る機会も無いので、そのたたずまいを味わえるのはよいものです。
都心の駅の近くということもあり、突然昭和の時代に紛れ込んだような気分を楽しめます。
入り口の郵便受けの赤が人懐かしげに感じました。

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今回出かけたのは、こちらの記事で紹介した金谷絵梨さんも参加されているグループ展「ものがたりの粒子」の案内をいただいたからです。

http://porcupine.sblo.jp/article/43785523.html

ギャラリーの案内によると
「心の内の物語をもとにした4名の作品による展覧会。それぞれの作品からこぼれ落ちたことばが部屋の中で混ざり合い、見えない架空の「本」が、都心に残る古い建物の空間を満たします。この展覧会は、「Tokyo Book Art Week 2011」の一環です。」とのこと。

白く塗られたビルの1室に、素材を生かしたシンプルでおもむきのある作品がかざられています。
展示、というよりは、ビルの壁に「もともとあった」。そんな印象を持ちました。
金谷さんの作品は、前回の展示のとき、広い空間をを生かした展示がとても印象深かったのですが、今回は狭いビルの1室に、やはり窓と壁にきれいな「間」を生み出し、線画による植物を静かに育てていました。

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残念ながら訪れるのが遅くなってしまったため明日までですが、神保町を訪れる予定の方はぜひお立寄ください。


ギャラリー「路地と人」 http://rojitohito.exblog.jp/


伊藤和代・金谷絵梨・怎々塚惣一郎商會・平島枝理子展「ものがたりの粒子」
会期:8/19(金)〜8/28(日)
時間:13:00〜19:00(8/19(金)は17:00からのオープンとなります)
休み:月・火・水・木曜日(金・土・日曜日のみのオープンとなります)
会場:路地と人
   千代田区神田神保町1-14 英光ビル2F
   東京メトロ半蔵門線神保町駅、都営三田線・都営新宿線神保町駅徒歩2分

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2011年05月26日

山梨へふたたび

この日曜日は、ふたたび小淵沢へと向かいました。
前回の記事で紹介した宇梶静江さんの個展にて、ご本人のお話しを聞ける会が開かれていたので参加するためです。

小淵沢へは通常、中央自動車道を使っていくのですが、今回は信州から入り、毎年訪れる撮影場所を通って行くこととしました。

4月の末には、まだ芽吹きだった信州の木々もすっかり葉を広げています。
その撮影場所は、ニリンソウとヤマブキソウが咲き乱れる谷で、毎年訪れているのですが。まったく飽きることがありません。
今年も良いタイミングで、花に出会うことができました。

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撮影を終え、しばらくすると雨、しかもかなり強い雨のなか、清里を抜けて小淵沢へと向かいました。
ちょうど小淵沢につく頃には雨は上がり、3週間ぶりのフィリア美術館です。
ここでも3週間前とはちがい、あざやかな緑が美術館をつつんでいました。


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宇梶さんのお話は、感じ入ることが多く、心に残るお話しでした。
ただ、宇梶さんのあたたかな話し方や、かもしだされる雰囲気もふくめてのことなので、その内容をここでつたない文にするのも難しいところです。

さらには、我々倭人がアイヌに行ってきたこと。
名前をうばい、言葉をうばい、文化をうばい、くらす場所、神聖なる場所をうばってきたこと。母なる大地と自然により恵まれるありとあらゆる物を売り買いの対象としたこと。それにともなう差別。
この背景、歴史の理解も必要です。
アイヌにも、いろいろな立場の方がいらっしゃるので、軽々に語れないこともあります。
また、機会があれば時間をとって文にしたいと思っています。
ただ、世界各地で、先住民の権利がうたわれ、文化の保存と復興を目指す流れがあるなかで、私たちも目を背けてはいけない問題のひとつです。

自然が好きで、その恩恵を感じ、少しは自然に恩返しをしながら生きていきたいなと思っているものとして、特に心に残った一節を。(少し補足的かつぼくの受けた印象的になってしまっているかもしれません。)

アイヌは、すべてを「だれかの所有物」と考えずに、この世での預かりものであるとしています。山菜や動物を採るときも、その一部をいただいて、自分の一部にするというふうに考えます。そして、自分もすぐに死んで土に帰るので、そうしたらまた、もとの世界にもどっていくのだそうです。すべての「いのち」には価値があるということにもつながります。

自分が死んだら、自然の一部に帰っていく。そして、また新たに何かが生まれる「足し」になる。自然で理にかない、無駄のない考え方のように思えます。
今、さかんにささやかれる「循環」「持続可能」といった言葉につながる考えで、消費するだけ消費する世界とは、別の価値観にある世界です。

こう書くと、メッセージ性の強い、むずかしい話だったかと思われるかもしれませんが、そのようなことはなく、ユーモアをまじえながら、やさしく、温かく、熱心に。いくつかのいろいろな話を短い時間ながらうかがうことができました。

そしてお話しのあと、少し時間をおいてみる宇梶さんの手による古布絵は、やはり宇梶さんのこめた思いが伝わってくる素敵な作品の数々で、時間を忘れて見入ってしまいました。

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森の香りと、山の冷えた空気を感じながら、そしていろいろ考えながらの帰り道。
雨上がりの空に、思いもかけずレンズ雲を見つけ、ちょっとうれしくなりました。

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宇梶静江 古布絵展
2011年 4月28日(木)〜6月26日(日)
9:30〜17:00
(最終日は15:00まで)

フィリア美術館
〒408-0041
山梨県北杜市小淵沢町上笹尾3476-76
TEL & FAX:0551-36-4221
http://www.philia-museum.jp/

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2011年05月21日

山梨美術館巡り〜アイヌの古布絵と動物画〜

ゴールデンウィーク中の1日、山梨へ出かけました。
以前、池袋の絵本ギャラリーポポタムでの展示も紹介した( http://porcupine.sblo.jp/article/43588346.html )、アイヌの伝統と心を古布絵で伝える宇梶静江さんの展示が森の中の美術館、フィリア美術館で行われているので見に行くためです。

近く(自動車で)には、大好きな動物画家、藪内正幸さんの美術館もあるので、久々に寄ってみました。

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藪内正幸美術館では、企画展『しりとり動物園』が開催中で、しりとりで、藪内さんの描く動物画を追っていくという楽しい展示です。

藪内さんの絵は、動物たちに対する愛情と時間をかけた観察の集積による、やさしく確かな表現が魅力です。
生き物が好きな人が見ると「腑に落ちる」という言い方がぴったり来ると思います。
あぁ、こういう表情する。とか、こういう仕草だよね。と言いたくなります。
フォルムや質感だけでなく、とても自然に魅力あるシーンを表現している。
藪内さんの絵の大きな魅力のひとつです。

哺乳類、鳥類、絶滅してしまった恐竜、昆虫、さまざまな種類の生き物がしりとりされています。選ばれた絵や展示の順番にはクスッと笑えるユーモアもこめられています。そのルールであるが故に、哺乳類の次に恐竜がでてきたりして、その意外性がおもしろく、また、藪内さんが描かれてきたバリエーションの豊富さに、またうなずいてしまいます。
とても楽しめました。

森の中にある美術館はとても落ち着け、周囲では鳥たちが飛び交っています。
近くにはサントリーのウィスキー蒸留所も。


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■薮内正幸美術館 
〒山梨県北杜市白州町鳥原2913-71■
TEL:0551-35-0088  FAX:0551-35-0089

『しりとり動物園』
2011年3月19日(土)〜7月12日(火)
絵本「しりとりどうぶつえほん(岩崎書店)」の原画を中心に、様々な生き物たちが「しりとり」でつながりました。誰もが知っている動物や、名前さえきいたことのないような生き物まで多くの動物、野鳥が登場いたします。

http://yabuuchi-art.main.jp/


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(※館内の写真はblogへの掲載をお願いし、許可いただきました。)



さて、そこからフィリア美術館へ。
小淵沢からほど近い、森の中にこの美術館はあります。
一時期、この周辺での撮影をしていたことがあり、何度か前は通っているのですが、うかがったのは初めてでした。

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広く、天井の高い展示室には、大きなパイプオルガンが置かれ、どこか教会のような雰囲気のある素敵な美術館です。

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宇梶静江さんは、アイヌ文化継承者でその心や生き方自然との接し方、わたしたち人間が自然のなかの一部であり、その中で生きていることを古い和服布などに刺繍されたアイヌのユーカラ=物語を通して伝えていらっしゃいます。

展示はポポタムさんでも行われていた福音館より刊行の絵本の原画によるもので、アイヌのユーカラを文様とともに刺繍されたものです。
実際に刺繍を見ると、糸の表現する色、布と糸との立体的な迫力、その力強さに吸いこまれます。

展示の点数も多く、より絵本の世界に訪れることができます。
さらに美術館の展示室のひろがりが、宇梶さんの物語世界をより大きく羽ばたかせ、絵本の世界の外にも大きな物語の国が広がっているように感じることができました。

森は荘厳であり、静寂であり、そして、とても楽しく賑やかであり、糸と布によって紡がれた物語が、この自然の運行のなかに数多に語られる「お話し」のなかのひとつであることを、深く感じることができました。

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宇梶静江 古布絵展
2011年 4月28日(木)〜6月26日(日)
9:30〜17:00
(最終日は15:00まで)

フィリア美術館
〒408-0041
山梨県北杜市小淵沢町上笹尾3476-76
TEL & FAX:0551-36-4221
http://www.philia-museum.jp/

常設展は平和をテーマに第二次世界大戦中に描かれた絵も展示されています。
カフェも併設され、森の中でコーヒーを楽しむことも。

(※館内の写真は展示の紹介をお願いし、特別に許可いただきました。)
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2011年03月10日

白の色彩-「叢-くさむら-展」

池袋のブックギャラリー、ポポタムでは、金谷絵梨さんの「叢-くさむら-展」が開催中です。
金谷さんのホームページを拝見してとても気になったので、出かけてまいりました。

http://kusamura.petit.cc/pineapple1/

作品は植物をテーマにしています。
和紙をベースに、鉛筆、プリント、染めなどの手法で造り上げた作品です。

線がきれいなこと、組作品の組み合わせの妙、紙のなかの空間の案配が良いことをまずは感じました。
そして何より、ギャラリー全体が「間」をとって雰囲気良く仕上げられています。
おそらくはイメージに近い形で空間を使えているのではないでしょうか。表現したいことがよく伝わります。

特に印象的なのは紙の白を広くとり、線で植物を描いた作品だったのですが、本来であれば足りていないはずの「白」が、見るものの心によりさまざまな色彩を見せてくれるように思えます。
それは、テーマの草むらのように、なんにもないようでいて、実はたくさんのたくさんのものがつまっている。そんな印象の作品たちです。


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金谷さん、今回が初個展とのことですが、とても可能性のある作品だと感じました。
今後また作品を見るのがとても楽しみです。
是非。



金谷絵梨「叢-くさむら-展」
ブックギャラリーポポタム
3.19(土)まで

171-0021 東京都豊島区西池袋2-15-17
営業時間 12〜19時、月曜定休・日曜不定(展示による)
03-5952-0114 popotame◎kiwi.ne.jp(◎を@に)



近隣には、オブジェかと見まごうばかりのネコもいます。(不定期です。)

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2011年03月06日

アイヌ文様の刺繍

池袋ポポタムで行われている「〜アイヌの大地がつないだ物語〜宇梶静江の刺繍展」。
先日このBlogでも紹介しました。(http://porcupine.sblo.jp/article/43588346.html

今日は再度の訪問で、アイヌ文様の刺繍のワークショップに参加してきました。
講師は宇梶静江さんの娘さんでアイヌ刺繍作家、宇梶りょうこさん。
ブックカバーに文様を刺繍することになりました。

藍色の木綿のブックカバーに好きな色の糸を選び縫っていきます。文様は3つの中から好きなものを選びました。

途中途中で、いろいろなアイヌ文化の話もしていただき、とても楽しい体験となりました。
服などになされる刺繍は、装飾の他に魔除け的な意味合いもあるそうです。襟や、袖口、裾などに縫うのは、そこから悪いものが入ってこないようにするためとか。
また、一針一針に思いを込めて縫うことが何より大切とのことでした。

ぼくは刺繍に関しては、ほぼ初めてに近い状態でしたが、指を刺し、途中何度か失敗しながらも、なんとか時間内に仕上げました。ゆがんでいるけれど気に入っています。

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以前、北海道を旅していて、アイヌの方に文様についてうかがったこと。
「文様の形に意味はないけど、きれいな文様やきれいな色で丁寧にできました。というのが大事。神様も喜ぶから。」地方によってもいろいろだから、決まりはないけれど。と前置きをした上でその方は言いました。

今日実際に自分で刺繍をしてみて、そんな話を思い出し、宇梶りょうこさんのお話しや、宇梶静恵さんの作品を見たことと合わせて、腑に落ちることが多々ありました。
「文様そのものの形」が意味合いをもつのではなく、「気持ちをこめて縫うこと自体」が意味があるのだろうな、などと感じました。
また、このような機会があったらぜひ参加したいと思います。


ポポタムの皆さんや、今日はスタッフとして参加されていた絵本作家どいかやさんもありがとうございました。お疲れ様でした。


宇梶静江さんは「第45回 吉川英治文化賞」を受賞されました。
「古布絵」の創作や絵本の出版をとおし、失われ行くアイヌ文化の伝承に努めるほか、海外との文化交流にも尽力されてことによるとのこと。
おめでとうございます。



会場は上り屋敷会館。懐かしくほのぼのした会場を用意していただきました。
渋いです。

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近隣住宅街にはケヤキの巨樹があり、この池袋に!と驚かされました。

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2011年03月05日

世田谷文学館にて『旅する絵描き いせ ひでこ展』


絵描きで絵本作家のいせひでこさんの原画展『旅する絵描き いせ ひでこ展』が世田谷文学館で開催中です。

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『ルリユールおじさん』『大きな木のような人』などの作品で知られ、好きな方も多いのではないでしょうか。

僕がいせさんの作品を知ったのは1996年刊行の文庫本「グレイがまっているから」という本でした。
いせさんの飼われていたシベリアンハスキー「グレイ」との生活を絵と文で描いた単行本です。
このグレイのシリーズ3部作で、「気分はおすわりの日」「グレイのしっぽ」と続きます。おかしくもあり、とても切なくもある、動物好きには泣ける本です。
この本を読んだときに、いせさん(この本では著者名は伊勢さんですが)は愛情を絵に描くことで表現するのだと感じ、絵が表現するところの奥深さを知りました。
もっとも大好きな作家さんのひとりです。

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原画展は、いせさんの代表作から多数の原画が展示され、またスケッチブックなどの私物も展示されていて、ファンにとってはとても楽しめる内容でした。

いせさんの描く絵は、登場人物や風景が本のなかでまるで動いているように感じます。
「動きのある絵」ではなく、生きているものをそのまま紙に吸いこんで、そこに住まわせたような。絵が生きている、そんな印象を受けます。
原画は絵の具の発色も美しく、いせさんが表現しようとしていることをより強く感じることができました。

そして、絵本を描き上げるまでの取材のことなども知ることができ、とても満足できる内容でした。
いつでもお持ちだというスケッチブック(なんと御朱印帳)と鉛筆、水彩絵の具で記された膨大な取材メモやスケッチ。おそらくは、目で見たとたんに手が動いているのではないでしょうか。
いせさんは、いつでも絵とともにあるんだなと。なぜかとてもうれしくなりました。

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帰り際、いせさんとすれちがいました。
いせさんの描かれる女の子そのままの雰囲気を身にまとっていて、またうれしくなりました。


世田谷文学館にて
〒157-0062 世田谷区南烏山1-10-10
TEL 03-5374-9111(代)

3月31日まで
http://www.setabun.or.jp/exhibition/isehidekoten/



吉祥寺にてちょっと面白い品揃えの文房具店Subloなどに。

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お昼は吉祥寺の煮込みカレーの人気店、まめ蔵に。
おいしかったのですが、出てくるまで20分以上かかったのは閉口でした。
休みの日に人気店なぞに行くのが悪いですな。

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2011年02月25日

刺繍のなかの物語〜宇梶静江の刺繍展〜

以前、バックパックで北アメリカを回っていたときのこと。
ワシントンDCのスミソニアンでは、アイヌの展示を行っていました。
アイヌの精神性や文化が鮮やかに展示されていて、北アメリカという遠く離れた土地ということもあり、より際だった輝きを放っていました。
私はそれまでも北海道に写真を撮りに出かけ、その自然を愛し、少しだけですがアイヌの文化にふれ、その自然との関わり合い方に共感する部分が多々あり、誇らしく思ったのをおぼえています。

池袋のブックギャラリー、ポポタムでは、アイヌ文化継承者で民族解放活動をつづける
宇梶静江さんのアイヌ刺繍を展示した「アイヌの大地がつないだ物語 宇梶静江の刺繍展」を行っています。

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http://popotame.m78.com/shop/index.html


展示されている刺繍はアイヌのユーカラ=物語を文様とともに刺繍されたもので、福音館より刊行の絵本の原画でもあります。

美しく、静かで、ときにユーモラス。そして大胆にデザインされた絵柄のあいだに、アイヌの文様が美しく縫い取られています。
その一針一針が紡ぎ上げた物語の一辺を見ていると、なぜだか心がざわめくのを感じました。

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本来、人々がが接していた自然。その接し方。
少しずつ自然との距離が離れていってしまって、気づくととても遠いものになってしまったような気がします。
私たちは、その失われかけた技術や心をどこに求めればいいのか。
そう考えたときに、少し古い時代に思いを馳せてみたり、
自然との関わりを大事にしてきた人々の生き方に耳を傾けてみたりするのです。
それは郷愁ではなく、時代を巻き戻しているわけでもなく、これから人間が地球の上で生きていくための新しい一歩なのかも知れません。

そんなことを感じました。



2011年2月23日(水)〜3月6日(日)まで。
ブックギャラリー ポポタム

171-0021 東京都豊島区西池袋2-15-17
営業時間 12〜19時、月曜定休・日曜不定(展示による)
03−5952−0114

同時開催で
またショップスペースでは絵本作家・どいかやさんの
アイヌの物語をモチーフにした描き下ろし作品に関する展示も行われています。

本日は、どいさんのお話し会もあり、参加してまいりました。
愛情の感じられる、とても良いお話しを聞けました。



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